ここ数年のコロナウィルスの影響で、建築の世界では、ウッドショックと呼ばれる木材の高騰が問題となってきましたが、最近は、さらに、円安の影響で、木材価格だけでなく、海外に製造の拠点を置く設備費なども価格が上がっています。
ただ、ウッドショックの影響は、必ずしも、悪いことではなく、海外からの輸入材に頼ってきた現状から、国産材の活用へとシフトしつつあることは、いいことだと思います。
これまで、豊富にある日本の国産材を活用してこなかった一番の原因は、国産材の価格が、輸入材に比べて高額だったことですが、ウッドショックの影響により、その差が埋まっていることを考えると、国産材の活用の比率は、多くなっていくように思います。
ただ、日本の林業は、効率性の悪さから、利益を出すのが難しく、後継者不足もあって、なかなか、産業として成り立たないのが現状ですが、時代の流れを考えると、新しいテクノロジーを活かした経営をする若い人などが参入してくれば、大きく変わる可能性があります。
元々、日本は、気候的に、良質な木材が採れる場所に加えて、国土の3分の2が山林であることを考えると、これを活かしていかないのはもったいと思います。
実際に、吉野杉に代表されるように、日本で採れる木は、海外の物と比べても、とても、質が良く、ブランドとして確立しているところでは、高価な価格で販売することもできています。
現状では、ドイツなどの輸入材を使うことも多いのですが、ドイツは緯度が高く、良質な木材が採れないため、ほとんど、集成材(木を接着剤で張り付けて使用する木材です)がメインですが、日本は、そういう加工を行うことなく無垢材を使うことができます。
集成材は、接着剤で張り合わせている分、強度が高いというメリットはありますが、無垢材が強度に問題があるというわけではなく、木そのものの魅力を感じられるという意味では、国産材のほうが質が高いと言えます。
日本の山は、地形的に、大規模な伐採が難しいので、小規模な事業者が効率よく、良質な木材をその質に見合った価格で販売することで、海外の輸入材に対抗していくというのが現実的な方法論のようですが、最近は、ドローンで撮影した写真をもとに、AIで樹種の選別を行い、高く売れる木材を中心に伐採することで、大きな利益を出す事業者なども出ているようです。
日本は、すべての産業で、IT化が遅れているので、その中でも、最も古い農業や林業の分野でこそ、活用するべきだと思いますが、若い人達のロールモデルになるようなやり方をする人が目立つようになってくれば、林業を魅力的に感じる若い人の参入も多くなるように思います。
実際のところ、それには、時間がかかると思いますが、一部の事業者の中には、一流企業のサラリーマン以上の年収を得ている業者などもいるようなので、やり方次第では、林業にも可能性はあります。
国産材に回帰するべき、もう一つの理由は、国際的な脱炭素化の動きで、地球温暖化の原因となるCO2を減らすというのは、多くの国の課題になっています。
もちろん、CO2が温暖化の原因というのは、すべての人にとって納得できるものではなく、科学的な証明に疑問がないわけではありませんが、国際的なルールができてしまった以上、それに、即していかなければならないのは、日本も同じです。
輸入材を使うのと、国産材を使うのでは、その輸送にかかる距離の問題から、CO2を削減できることに加えて、木を切ったあとに、新しく植える木が成長するときに、CO2を吸収してくれるので、二重の意味で、国産材は、温暖化の影響を抑えることにも貢献できます。
最近は、冬に薪ストーブを使う家庭も増えているので、間伐材をそれに、活用することで、利益を得ることもできるので、良質な木材をできるだけ、それに見合う価格で販売しつつ、間伐材も同時に、活用することで、利益を出していくことを考えれば、補助金に頼らなくても、林業として成り立つ可能性があります。
将来的には、良質な木材を海外に、高級材として販売することができれば、自立した産業として、大きく成長していく可能性もありますが、ウッドショックは、それを考える大きな機会になっているように思います。
当面の間は、輸入材と国産材をミックスして使用していく流れになると思いますが、家を支える重要な部分を良質な国産材を使って、残りを輸入材という家の作り方もできるので、国産材の活用方法としては、色々な方法が考えられるように思います。
林業は、若い人にとって、やりたいと思わない仕事の一つだと思いますが、きちんと利益が出て、儲かる産業になれば、田舎の活性化にもつながるので、ITの専門家と林業の専門家が知恵を出し合って、新しい産業に作り変えていくような地域などが出てくれば、面白さを感じて、参入する若い世代も出てくるように思います。
日本に住んでいると、本当に、緑が多い国だと感じることが多いのですが、山の美しさを保ちつつ、貴重な資源を活用していくことができれば、過疎化の問題を、解決することにもつながるので、新しいテクノロジーを使える人と連携して面白いことをしていく人が現れることを期待しています。